夕食も済ませ洗い物をしていると、カカシさんがぼんやりと襖を眺めておもむろに口を開いた。
「そろそろコレ張り替えます? 湿気で大分ぷよぷよしちゃってるし、穴も空いてる」
ずっと頭の片隅にはあったのだけどついつい後回しにしてきた襖の表面は、
彼の言う通りみっともない有様だ。オレは恥ずかしくてわざと大きな声を出した。
「あー、言われてみればそうですね。でもオレ、襖とか障子とかの張替えってどうも苦手で」
最後の一枚の大皿を洗い終わったのでカカシさんの隣に移動して腰を掛ける。見れば見るほど不恰好な襖だが、これでも過去に一度取り替えたのだ。
「これも一回やったんですけどね、デコボコしちゃって」
「多分糊の量が均一じゃなかったんでしょうね。あれって結構コツがいりますから。今度俺も手伝います」
「いいんですか!?」
里の誉れに障子の張替えを頼む中忍、それがオレ。でもカカシさんも嬉しそうだし構わないと思う。
「俺の家でもありますから。糊をうまく拡げてすぐ紙におんなじだけの力を加えるのは素人一人じゃムリですよ。
でも二人でやれば簡単です」
俺の家、と言った時カカシさんはちょっとオレの表情を伺うようにしていたので、それが正しいことを伝えるためカカシさんにしか見せない特別の笑顔で頷くと、彼も嬉しそうにした。
「俺が糊塗り拡げてイルカ先生が上から押さえればすぐですよ」
カカシさんが言うと説得力があるなあと感心しているとちょいと手を引かれ耳元で囁かれた。
「ね、せんせ。二人で練習しましょ。せんせが俺に乗っかって・・・」
え?
「せんせが掌で俺の腹を押す力が両方均一かどうか確かめてあげますから」
・・・襖の話がしたいんじゃなくておねだりだったのか!
今回はしてやられたと心の中で拍手を送るオレだった。
******
カカシ先生の上で散々練習させられて翌日のオレのコンディションは最悪だった。喘ぎすぎで喉もガラガラだ。
しかし彼は腐っても上忍、オレがベッドから起きられないうちに影分身といろんな謎の術で我が家の襖をピカピカに張り替えてくれたのだった。
数日後、今度は和室の障子の話を振られたが翌日は体術の授業だったのでスルーをさせてもらったのはまた別の話。