一日かけて木の葉中にほぼ洩れなく連絡を回した二人は、愛の巣にてちゃぶ台を挟みまったりとほうじ茶を啜っていた。
「カカシさん、全員に連絡は済みました?」
「うーん、済んだっちゃ済んだんですが」
カカシの歯切れの悪さにイルカは首をかしげる。
まさかサボったんじゃと疑惑が一瞬顔をだすが、この人は家族のことをおろそかにする人間ではないと思い直した。
「なんかはっきりしない物言いですね。誰か連絡つかなかったんですか?」
「あの、伝えにはいったんです、サスケに」
「あぁ……」
合点がいった。この木の葉の里の出身を名乗っていてサスケのナルトに対する溺愛振りを知らない者は
他里のスパイだと断言出来るほど有名なのだから、彼が憔悴していることも容易に想像が出来た。
「げっそりしてて、体中の水分抜けちゃった感じに。俺の言葉に返事もしないでドア閉めちゃいました」
「下痢じゃないですか?ストレスで」
「ですかねぇ・・・」
いろいろ問題を起こしたとはいえサスケもイルカの可愛い教え子の一人である。
数年かけて罪を償い、ナルトを始めとした同期達の支えもあって今は木の葉の里を代表する上忍の一人となった彼の胸中を
思うと少々胸が痛い。もっとも、ナルトとヒナタが交際していることは以前から承知しているはずではあるのだが。
「アイツはナルト大好きでしたから。公開プロポーズをナルトが天然でスルーしたことありましたよね」
「ああ、あれは凄かったです。
慰めに行ったら『お前に何が分かる』と塩投げつけられましたよ。
しかも間が悪いことに俺その日イルカ先生と朝までシてたじゃないですか。
寝不足なのに幸せそうな様子目の当たりにしてもうサスケ号泣、顔から出るもの全部出てました。
『大ウスラトンカチ』の称号貰いましたよ」
その日、を思い出してイルカは赤面した。
きっかけは忘れたが珍しくイルカの方からカカシを求め、それに大興奮したカカシが一言では表せないくらい凄いことになった
夜だった。次の日の事件と合わせよく覚えている。
狼狽を隠すようにわざと憮然とした表情を作って、冷めかけたお茶を啜った。
「それはカカシさんが悪いです」
「ですよねー」
カカシはあの夜の内容を思い出したのか、それともクールの仮面を脱ぎ捨てたサスケを思い出したのか、意地の悪い笑みを浮かべている。
――嫌な予感がする。
「ちょっとは取り繕ってあげてくださいよ、教え子でしょう」
少々事務的な言い方を装ってもカカシはどこ吹く風で、だらしない顔で徐々にイルカににじり寄ってきた。
「久し振りに大満足なエッチの後だったんでテンション上がりきっちゃっててー、オールだったしー」
「言い訳しない!あと語尾を伸ばさない!あ、お茶淹れなおしますか?」
雲行きが怪しい。無理矢理話題を逸らそうとしても時既に遅し。
「お茶はいいです、それよりあの日を思い出したら――ね?」
完全にカカシのペースだ。長年の結婚生活で培った経験により、イルカは早々に己の負けを悟った。
「もうっ、ナルトがまだ帰ってきてないからって・・・」
唇を尖らせればそこに軽いキスが降って来る。唇が触れる時間が長くなり、口付けが深くなるのも時間の問題だ。
「今夜は日向に泊まるって式が飛んできましたよ。ベッドも整えてあるしティッシュも切れてたの補充しときました」
「今思いついたようなこと言って、準備万端じゃないですか」
おそらくナルトから式が届いた時点でその気だったのだろう。呆れるのにももう慣れてしまったくらいこういう展開は多い。
カカシの性欲はいくつになったら落ち着くのだろうかと常々疑問に思ってしまうくらいの頻度で今も求められる。
「年も年だしあんなに激しくは出来ないけど、その分愛情を割り増しでお送りします!」
しかしそれを幸せに思っているイルカ自身もいるわけで。
「・・・オレはいつも最大限の愛情を明け渡してるつもりですけど?」
「!!ッイルカせんせー!!!」
イルカのちょっとした計算違いはその場で押し倒されたことである。
「べ、ベッド整えたんでしょう?あっちで、あっん・・・・」
カカシの耳から下半身への伝達速度の予測を間違えたイルカは、次の日カーペットを洗濯する羽目になった。