木の葉の里でネズミや虫の大移動が確認された。
どこからともなく現れた大量の動物達が、一方向に移動を始めたのである。
学者達はすわ天変地異の前触れかと調査を始め、
手の空いている忍び達は総出で里の建物の耐震強化作業に駆り出されることとなった。
特に木遁使いのヤマトはその能力からあっちこっちに引っ張りだこで、
日に日にやつれながらも任務をこなしている。
白眼の精度の高い日向の者達が集められ地中深くを探ったが地震の兆候は見られず、
火遁使い達が火の国東方の火山を調査しても異常はなかった。
土遁使い達は地盤の強化に努め、
水遁・雷遁・風遁使い達が力を合わせ雷雨を引き起こして擬似嵐で実験を繰り返した。
全員が「何事も事前準備だ」という女傑の言葉に従い着々と対策を進めて行き、
九尾が復活してもビクともしないほど強固な木の葉の里が完成し、皆が有事に備えた。
所変わってここは木の葉の中忍独身男性寮。
かつては里中の有象無象が住み着いていると噂されていたボロい・汚い・安っぽい寮だったこの場所も、
かつてないほどのリフォームが施され防音加工もなされた建物となった。
流石に中忍独身男性寮だけあって里の人々の家や上忍寮、暗部宿舎や中忍独身女性寮よりも後回しにされたのだが、
その分力の入った改装がされた。
ところが、この建物の強化が終わると同時にピタリと動物の大移動が停止したのである。
この事実に木の葉の里の上層部や学者達は一様に首を捻った。
ひとまず天変地異の兆候は一切見られなかったため生活を通常に戻す命令が出され、
人々は恐る恐る元の生活を開始し、徐々に平穏を取り戻した。
ここで、ある学者が数週間後に火影に提出した資料を紹介したいと思う。
曰く、大移動していた生物達は、どうも中忍独身男性寮の方向から移動をしてきたと。
寮で大量のバ●サンを焚いたのか?
そんな仮定が生じたが、住人の証言でたちまち否定された。
憶測が憶測を呼び、なら超音波だ、いやプラズマだ、幽霊だなどと根拠の無い噂ばかりが流れた。
しかし住人は本当の原因を、なんとなく悟っていた。
ただ、言い出せなかったのだ。
彼らがその結論に辿り着いたのも、里が完備された後だったので止めることすら出来なかった。
火影には言えない、「自分達も改装が行われる前には出て行こうと思っていた」などと。
もう被害はないし。
だって防音されたから。
それに、耐震構造になったから揺れないし。
時は遡る。
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「あ、も、カカシさぁんっっ」
「イルカ、イルカ、ああもうサイコーッ」
毎晩の営みに揺れるボロ寮、全室に響き渡る男同士の喘ぎ声。
ネズミもゴキブリもその他魑魅魍魎が尻尾を巻いて逃げ出し、人も寄り付かなくなった中忍寮。
里を巻き込んだ騒動の原因は、この度想いと体を通わせた一組のカップルであった。