繋がるまで

 里の中心から若干離れた一軒家で暮らしていたイルカの元へカカシが転がり込んできたのは、 二人が恋仲になって間もない頃だ。
 「なるべく多くの時間を愛する人と過ごしたい」と上忍寮を引き払ってきた恋人をイルカは満面の笑みで迎えた。 それから二人は同棲を始め、穏やかな時を過ごしている。
 半月という月日が流れ、夕食を終えたカカシがイルカに「話があるから座ってください」と促したのはつい先程の話。
 カカシはベッドの上に正座している。イルカは首をかしげたが、恋人に倣って自らも同じ場所に正座した。
 話を聞く体勢が整ったのを確認するとカカシはこう切り出した。
「あなたと繋がりたいんです。出来れば抱きたい」
 そう告げた彼の瞳は煌々としている。 そんな目で恋人に見詰められて平静でいられるほど恋愛経験が豊富でないイルカは頬を染めてついと視線を逸らしたが、 代わりに一つ頷くことで承知の意を示した。カカシの表情が和らぐ。
 そのまま押し倒されるのかと身構えていたけれどカカシは動かない。どうしたのだろうと顔を上げると手を重ねられる。 普段はどちらかというと冷たいカカシの掌がほんのりと熱を持っていて、 それを彼の思いの温度が漏れ出ているのだと暗に伝えられている気がして、イルカの顔の熱も上昇した。
「痛みや苦しみをあなたに与えたくないんです、だからね」
 カカシの陶磁器のような白い頬にも朱が差す。
「三日間あなたのお尻を弄らせて?」
 意外な申し出にイルカは固まった。


******


「あの、オレ自分で・・・」
 イルカはそれだけをやっとの思いで搾り出したのだがカカシは首を振る。
「俺の手であなたに気持ち良くなって欲しいと願うのは我儘でしょうか」
 そんなことを言われたらもう何も言えなくなってしまう。
 男同士の性交渉にどこを使うのかはイルカも理解している。 そこを三日間愛しくて愛しくてたまらない人間に弄られ、彼を迎え入れる。想像しただけで顔から火が出そうだった。
 しかし繋がりたいという気持ちはイルカも同じだ。 彼が自分を傷つけたくないという優しさからの申し出を蹴ることなど出来ない。
 諾の答えを絶え絶えに伝えたイルカを、カカシは堪らず抱き締めた。
 明日イルカ先生が仕事してる間に家中の隠しカメラ、雷切で充電満タンにしなきゃね―― 腕に抱きこまれて恥ずかしそうに俯いているイルカには、脳内でそんな計画を立てているカカシのにやけた表情に残念ながら気づけない。


******


 では早速とばかりに圧し掛かってきたカカシの手にはいつの間に用意したのかチューブのローションが握られていた。
「今日はお尻に指が一本入るようにするのを目標に頑張りましょうね」
 甘い声でそんなことを囁かれてはイルカの腰は瞬く間に砕けてしまう。 力の入らない体のまま仰向けに寝かされ、あっという間に服を上下とも剥ぎ取られる。 一糸纏わぬイルカに対し、カカシはズボン一枚
 掌でローションを人肌程まで温めていたカカシが、もじもじと股間を隠そうとするイルカの様子を眺めながら満足そうに口角を吊り上げた。
「だいじょーぶ、ゆっくり気持ち良くしますから」
 鼻傷に口付けを落としながらぬるつかせた左手で乳首を軽くさする。 それだけでは擽ったそうにしていたので今度は強めにこすってみると、徐々にイルカの声が熱を帯びてきた。
「ん、お尻だけじゃ・・・?」
「勿論他の場所も全部愛しますよ」
 耳の裏、鎖骨の下、両の乳首、へその下とカカシの舌と唇が落ちていく。
 ふるりと勃ち上がったイルカの欲望をそのままに内腿やふくらはぎへと愛撫を続けていると、 イルカは耐え切れなくなったようで自分でそれを握りこもうとした。
「まだだーめ」
 手首が掴まれてしまうとイルカはいやいやと首を振る。
「後ろを解しながら俺のと一緒にしましょうね」
「じゃあはやく・・・」
 カカシは前かがみになって奥歯を噛み締めた。可愛いおねだりにうっかり射精しそうになってしまったからだ。
「うつぶせになりましょう。もっと腰上げて」
 気を逸らすために体勢を変えてもらいなんとか射精感をやり過ごすと、カカシは更にローションを継ぎ足し、イルカの後口に骨張った左中指をあてがって円を描くように塗り込めた。 そのまま慎重に第一関節の半分まで挿入して左右に動かしてみる。
「イルカせんせ、こっちに集中して。でもまだ出しちゃいけませんよ」
 カカシは自分の性器をズボンから取り出し、右手でイルカのモノとまとめて軽くしごきながら、後ろの筋肉をマッサージの要領で優しく解していく。 イルカは言いつけを守って前に集中してくれているので不快に思われることなく指は次第に奥へと飲み込まれていった。
 中指がちょうど半分程度埋まったところで再び左右に動かすと、イルカはぐぅと苦しげな声を出す。 排泄感と戦っているのだろう、快楽の汗が脂汗に変わる。
 カカシは最初の状態まで指を引き抜くと、苦しい思いをさせてごめんね、という謝罪の代わりに舌を絡める深いキスをした。それにたどたどしく答えてくれる恋人の愛らしいこと。
 挿れて引いてキスをして、といった行為を何回か繰り返すと、慣れたのか指を動かしても声に甘さが含まれたままになった。
 カカシは額に浮かんだ汗を二の腕で拭うと、ミリ単位で奥を目指す。進むごとに右手の上下運動を少々強めに調整した。イルカの声から不快感は感じられない。
 そして長い長い時間を掛け、とうとう指が全て埋まった。それをぐりっと回しながら今日の終了に向け今までの比でない力強さと緩急で前をしごく。
 やがて上がる小さなうめき声と飛び散る白濁、中指への圧迫、開放感、達成感、愛情。二人が同時に射精した際カカシが感知した全てだった。指を引き抜く瞬間は顔をゆがめたが、イルカも満足そうだ。
「イルカ先生、よく出来ました」
 ぐったりと脱力する恋人の髪をくしゃりと撫でると、照れ屋な彼は布団に潜って顔を隠してしまった。
 可愛くて仕方が無い。本日二度目の本気の抱擁をイルカに贈ってからカカシは後始末を始めた。


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