クラウド・クラウン

「く●じいじゃ」
 一週間の仕事を終えやれやれ明日は休日だとベッドに体を預けた矢先、 鳴らされたチャイムにしぶしぶと玄関を開けてみれば とんちんかんなことをのたまう顔見知りの上忍が立っていた。
 言うまでもないが、勿論くも●いじゃない。
「カカシ先生じゃないですか」
「今の俺はく●じいです。お邪魔します」
「あっ、ちょ……っ」
 イルカの都合など聞く耳持たない上忍様は、見栄を張っても決して広いとは言えない中忍寮の玄関をずかずかと越えていく。
 それどころか「いやーく●じいの顔パスは流石ですねー、難攻不落のイルカ先生のお宅にも入れる」などと戯言を並べる。
 無駄に早業でキッチリ揃えられたサンダルを横目で睨み、イルカは諦めて招かれざる客を居間へ通した。
「何なんですか……」
 湯を沸かすのも面倒なので冷蔵庫の冷えた麦茶をコップに移しカカシの前へと置いた。
 そのまま立ってる訳にもいかずに向かいに腰を下ろし、イルカはじっと目の前の上忍を観察する。
 カカシは遠慮する様子もなく、じろじろと部屋中を見回している。
 時折鼻をふんふん動かしたりして失礼極まりない。
 男の一人暮らしの部屋の何がそんなに面白いのか。
 相手が無遠慮ならこちらもと不躾に睨みつけていると、はたと目が合った。
 カカシの右目がへにゃりと歪んだので、居心地が悪くなって視線を逸らす。
「ぶつくさ言いながらお茶出してくれる優しいイルカ先生が好きなんですよー」
 いただきますね、と胡散臭い口布を下ろした顔は嫌味なくらい整っていた。
 それもまた、イルカの心をささくれ立たせる。
 よそへ行けばいいじゃないか、と。
 なんでうちなんだ、週の終わりで疲れてるんだから休ませろよ、と。
 ……別の日だったらちゃんと対応出来たのに、と。
 イルカの内心を知ってか知らずか、カカシは額宛まで取り去ってにっこり微笑み訪問の目的を告げた。
「今日はね、顔パスでどこまでお邪魔できるかなってチャレンジしに来ました」
 なんだそりゃ。
「目的は達成できたでしょう。ご帰宅願います」
「やだなあ、まだまだ序の口ですよ」
 手甲の嵌められた右手がひらひらと振られる。
「百聞は一見にしかずってことで、『邪魔するぞい』」
「へ?」
 天井が見えたかと思うと、カカシの端正な顔が近づいてきた。いつの間にちゃぶ台を乗り越えたのか。
 ていうか近い、息がかかるくらい近い。
 イルカが顔を背けるとぐいと前を向かされる。
 ぎゅっと上下の瞼に力を込めた時には、イルカのぽってりとした唇にカカシのソレが押し付けられていた。
「やめっ……」
「じゅるる」
 唇を離し制す言葉を紡ごうとしたその瞬間、至近距離で発せられたその擬音にイルカは突っ込まずにはいられなかった。
「それ、く●み……ふっぁ」
 舌が絡められ、逃げると上顎の敏感な部分をなぞられる。
 鳥肌を立てて力をなくしたところでまた舌をいいようにされ、ねちっこいキスから解放された時には口の中も周りもカカシと自分の唾液が混ざったものだらけでおかしな味がした。
「べったべた。おいしそ」
「なん……アァッ」
「なんじゃこりはー」
 ちょっとした隙に服の下への侵入を許してしまい、尖りがキュッと抓まれた。
 ただ胸に貼り付いているだけと特に意識したこともなかったソコが硬く芯を持ち、ぐりぐりと弄られると体が火照っていくのが分かる。
「やぁ……」
 甘えた声が出てしまい慌てて両手で口を閉じるイルカだったが、「カワイイ、もっと聞かせて」と腕ごと頭の上で纏められてしまった。
 乳首を弄られながらにべもなく喘ぐ。ちゅっちゅと頬やおでこ、鼻の頭に口付けが落とされ目の前の男によって引き摺り出される快楽に溺れていく。
 脳の中心もどこかぼんやりとして、完全にイルカの思考能力は奪われていたが、下衣の内側に手が這わされたことによって再び正気に戻った。
「な……ッ、そ、んなとこっ」
「ん、もさもさしてる。もじゃハウスですね」
「〜〜〜〜〜〜ッッ、バカッ」
 鼻の穴を膨らませながらイルカの表情を伺ってくる。
 こんなことでドヤ顔する上忍もどうなのか。 そしてちょっと上手いと思ってしまった自分もどうなのか。
 そもそもこんな行為は嫌なのに、止めなきゃいけないのに。
「えへへ、怒られちゃった」
 嬉しそうにはにかむ表情を見てしまうとイルカは何も言えなくなった。
 己はどこまでお人好しなのかと自嘲する。
「公園アニマルズもいましたよ、ゾウさん」
 カカシは膝の上までズボンとパンツを下ろした状態のイルカの中心を掴むと、巧みに絶頂へと誘った。
 目の端に映るカカシの前は膨らんでいるのに触れようともしない。
 男同士で擦り合いをする程度だと思っていたイルカは、とろけて舌が回らないながらも率直な疑問を口にした。
「カカシ先生のは……?」
「ん、気にしてくれてるの? 嬉しいな、でも俺のはせんせのナカでね」
 そうか、中かーと漠然とした感想を持ちかけたイルカだったが、脳が冷えていくにつれその言葉の真意を理解した。
「中って、俺のケツの!?」
「ケツとか言わないの。ココは蕾とか秘所と呼びなさい」
 ココ、と押し付けられた指はイルカが出したもので濡れていて、穴と擦れてぐちゅと卑猥な音を立てる。 そんな場所を今触れられているのかと思うと全身が気持ち悪さで粟立った。
「ひうっ、やめ……」
「やめませんよ。止まらないの」
 上半身も下半身も半端に脱がされているイルカと違い、 カカシは素顔を晒していることを除けば普段と変わらぬ忍服姿だ。
 胸ポケットから素早くチューブのようなものを取り出したカカシは、ようやくベストを脱いだ。
「俺体温低いから軟膏温まりにくいかもしれません」
 ごめんね、と耳元で囁くとぬるぬるとしたものを纏わせたカカシの長い指が イルカの後ろを割り裂こうと押し入ろうとした。
「む、り……きもちわる……」
「うーん―――あ、そうだ」
 カカシはイルカから体を離すと素早く印を結んだ。 こんな時でも「流石カカシ先生程の忍びになると印を結ぶスピードが桁違いだなぁ」などと考えてしまう 自分の暢気さをイルカは呪う。
 ぽんっと二人の間に現れたのは人の顔ほどの大きさの、白くてもこもこした物体だった。
「雲、ですか?」
「触れますよ、ほら。ふかふかで気持ちいいでしょ」
 ついっとカカシに渡された物体はなるほど、見た目は密度の高い雲であるのに質感は高級な綿のようだ。
「わ、本当ですね。綿よりもずっと滑らかで不思議な感触です。子供の頃に想像した雲の触感みたい」
 雲に頬ずりをしたり顔を埋めたりするイルカを、眩しいもののように眺めながらカカシはぽつりと零した。
「いやー、空島は本当にあったんですよ」
 首を傾げるイルカをまあまあといなし、カカシはむにゅむにゅと形を変える雲の半分ほどを毟り、ドーナツ型に成形してイルカの雄に装着した。
「え、いや、何を!?」
 外そうと股間に下ろされたイルカの両手は再び頭の上に纏められ、文句の言葉を紡ごうとする唇はちゅっと塞がれた。
「『雲自慰じゃ』ってことで。こっち集中しててくださいね、残りは握ってて構いませんから」
 そう言って再び印を結ぶと、雲が淫具のようにいやらしい動きを開始する。
「あっ……ふ、んん」
 イルカが甘く啼くのを確認すると、カカシは改めて後ろの開発に取り掛かった。
「いい感じですよ、そのままそのまま。カカシトンガリ計測部が15度を確認するまで頑張ってくださいね」
「も、バカなことばっか……ひんっ」
 カカシの思考で操れるのか、抵抗しようとすると雲はイルカのイイトコロを締め付ける。
 思わず上がってしまったイルカの嬌声に、カカシは口角を持ち上げた。
「イイ声。俺の手よりも気持ち良さそうで嫉妬しちゃうかも」
 じゅぶじゅぶ、とありえないくらい奥まった所からありえない音が聞こえ出して、イルカは憤死寸前だ。 だが下半身の雲の動きが意識を飛ばすことを許してくれない。
 先端からは先走りが溢れているのに雲は男の体を心得ているのか寸止めのままイルカを刺激する。
 出したくても出せないこの状況にイルカが泣き出しそうになったちょうどその時、カカシがふう、と息を吐くのが耳に入った。
「せんせ、ありがと。もう入ると思うからあともう少しだけ頑張ろうね」
 そっかー入るのかーよかったー、オレ頑張ったなーと漠然とした感想を持ちかけた所で、デジャヴを感じた。
 が、深く考える前にころんと転がされたかと思うと、右足を持ち上げられて肛門に物凄い質量のモノが入り込み、イルカの思考は全て吹っ飛んだ。
「お邪魔します……っ」
「あああああッッッ」
 ギチギチに広げられた後ろの圧迫感に、雲の動きすらも感知できなくなった。
「―――ッ、キツ、でもすごい、幸せ……」
 カカシの低く掠れた声がイルカの耳を犯す。頭の中も体の中もカカシで一杯でどうしようもなくなる。
「っ、はぁ、んっんっ」
 あっという間に奥まで貫かれ、揺さ振られる。苦しいだけだったのが、ある一点を突かれた途端快感が全身に走った。
「ああ、ココせんせのナカのイイトコだよ。俺しか知らないの」
 散々いいようにされた後、「これもういらないよね」と雲が取り払われた瞬間、イルカは前を弾けさせた。
「せんせ、スキ。ずっと好きだった……っ」
 告白と同時に最奥に熱いモノが叩きつけられたかと思うと、そのまま目の前が真っ暗になった。


******


「なんでまだいるんですか……」
 待ちに待ったイルカの休日は、体を清められた状態でベッドに横たわり、ガラガラの声で隣に寝転ぶ上忍に訊ねる所から始まった。
「えー? 知らないんですか? く●じいの番組昨日で終了だったんですよ」
 どうもこの男は昨日からくも●いにこだわりすぎている。余程最終回がショックだったのか。
「だからもうどこにもいけないんです。イルカ先生俺を家に入れてくれたから、もう出て行きません」
「はあ!?」
「生活費は先生の口座に振り込んであるし、転居届けも役所に出して来ました。よろしくお願いします」
「そんな勝手な!」
 身勝手な上に無駄に上忍の行動力のせいでイルカの逃げ場は塞がれていた。
「とりあえず今日後輩呼んで防音工事しますねー」
「助けてぇぇぇぇっっっ」
 イルカの悲痛な叫びも空しく、二人は雲のような髭をたくわえた爺さんになって共に天寿を全うしたそうな。
 (カカイル的に)めでたしめでたし。
 

タイトルは何となく。                    

 11/1追記:「十三屋」の伊豆さんが雲自慰のイメージイラストを描いてくださいました。


 ふぉぉ……!
 私伊豆さんが雲自慰のイラスト描いてくださるって仰ったのでエロ頑張れたのです!
 伊豆さんありがとうございます。
 印刷して額に入れて家族から白い目で見られたいと思います。
 嘘です。


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