※多少テンゾウ×モブ表現あり
少々無理を重ねて三日間の有給休暇をもぎ取った。
そこそこ良い旅館を予約した上で「温泉旅行にいかないか」と誘うと彼女は柔らかくはにかんだ。了承ってことだ。
しかしすぐにその表情は曇ってしまう。
「でも、任務は大丈夫なの? あなた忙しいのに……」
不安そうに彼女は問う。
毎日馬車馬のように働く自分を案じているのだろう。
だからとびっきりのキメ顔で言ってやった。
「任務よりも君が大事だからね」
その日、久し振りに甘い夜を過ごしたのは言うまでもない。
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当日、うまい具合に快晴となり彼女のご機嫌はうなぎのぼり。
互いに周囲から結婚をせっつかれ始めていることだ、今日を機転にそろそろ身を固める方向の話を進めてもいいかもしれない。
じゃあ行こうか、と彼女の華奢な掌を取ろうとしたボクの右手に一羽の鳥が滑り込んできた。式だ。
それを確認した途端彼女の眉が下がってしまう。
「任務の通達?」
「まさか。もしそうだったとしてもちゃんと有給取ってるんだし赴いて余程のボクじゃなきゃいけないようなもの以外きっちり断るよ。折角の旅行なんだし」
そう言葉にすると彼女は嬉しそうにした。
印を結ぶと鳥は瞬時に紙に変化した。
そこに書かれていたのはミミズののたくったような「家壊れちゃった」の文字とへのへのもへじ。
ボクは荷物を持ち直して彼女に頭を下げた。
「ごめん旅行はナシ。呼ばれちゃった」
彼女の顔色が変わる。青くなったと思ったらすぐに赤くなった。
「そんな!仕事よりも私って言ったのに!」
今はそんな言い争いをしている場合じゃないのに面倒臭い。
「仕事じゃないよ、カカシ先輩からの呼び出し」
彼女はボクの一言に血管切れるんじゃないかと心配になるほど真っ赤になって叫んだ。
「あ、あなた私との旅行とはたけカカシどっちが大切なの!?」
何を言っているんだろう。そんなの答えは分かりきっている。
「カカシ先輩」
平手が飛んできて頬がえぐれたかと思った。しかし倒れてる時間はない。
「別れる!」と彼女が駆け出すのを尻目にボクは瞬身の印を組んだ。
テンゾウ大好きbeni-t○roさんに捧ぐ